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Ableton Live | 直感を損なわず、MIDIの可能性を最大限に引き出すDAW

Ableton Live は、クラブミュージックのプロデューサーを中心に、エレクトロニックや実験音楽的なアプローチをするミュージシャンなど、幅広い層に愛用されています。
主に「動作が軽く、直感的な制作ができる」という評価を受けているDAWではありますが、実際には制作過程においてどのように活用されているのでしょうか。

Ableton Live には主に下記のような特徴があります。
今回の記事では、WEB上に公開されている様々な関連動画をご紹介しながら、それぞれの特徴について、詳しく解説します。

• 音を止めずに直感的な制作が可能
• MIDIの可能性を広げる機能やデバイス
• ライブパフォーマンスでも活躍
• 楽器のように機能する専用コントローラー

 

音を止めずに直感的な制作が可能

こちらの動画では、ロサンゼルスのビートメイカー/プロデューサーであるMndsgnが、内蔵のドラムデバイスによる打ち込みから、その場での自身の演奏のレコーディング〜処理までを、ほぼループの再生を止めることなく行うことで、わずか10分で耳に残るビートを作り上げる過程を味わうことができます。

動画内では、スプレッドシートのような画面上で制作をしている様子を確認できますが、これは、Ableton Live独自のインターフェイスである「セッションビュー」と呼ばれるものです。
このインターフェイス上ではオーディオ、およびMIDIのパターンを「クリップ」と呼ばれる単位でトラックに配置していき、それらを自由に組み合わせながら曲を構築することが可能です。
また、セッションビュー上で、オーディオデータを曲のテンポに追随させつつ、クリップ単位でのループ再生を可能にするWARP機能を駆使することで、この動画のように、音を止めずに直感的な楽曲制作をすることが可能になります

また、次にご紹介する動画では、エチオピアを拠点に活動するAhaduが、Washintと呼ばれるエチオピアの伝統楽器のサンプルをlive内のサンプラーデバイス「Simpler」にインポートし、ビートの核となる印象的なフレーズを数分で作り上げています。

Simplerも、読み込ませたサンプルを曲のテンポに追従させることができ、かつ、サンプルの波形を自動で解析し、スライスを行う機能も搭載されていますが、この動画内でもその機能を駆使して、即座にフレーズを生み出す様子を見ることができます。
※Spinnupから他者のサンプルを使用した楽曲をリリースするためには所定の手続きが必要です。詳細はこちら

こちらの動画では、日本のプロデューサー 食品まつり a.k.a Foodman は、ラップトップに直接つないだイヤホンに内蔵のマイクから自分自身の声をサンプリングし、そのフレーズを核に、ものの10分で、サウナにインスパイアされた、サイケなアンビエントトラックを作り上げました。
動画のエンディングで本人が語っている、サウナに対する哲学をチェックすることで、更にこのトラックも味わい深いものになるでしょう。

 

MIDIの可能性を広げる機能やデバイス

Ableton Live では多数のMIDIエフェクトやMIDIデバイスを使用することが可能であり、MIDIを使用した作曲の可能性を大いに広げるのに役立ちます。

この動画では、ひとつのMIDIクリップをループさせているトラックに、音階をランダムに鳴らすことができるデバイス(Random)と、一定のScale内に音階をおさめることができるデバイス(Scale)を挿入することで、意外性がありつつもまとまりのあるフレーズが次々と生成される様子が紹介されています。
このようなアプローチで、自分では想像がつかないフレーズやメロディを生み出すことがLiveでは容易になるのです。

また、Live 9 からは、オーディオデータをMIDIデータに変換する機能が搭載されています。
この機能により、楽器によって演奏されたフレーズ(ドラムのパターンやピアノのコードなど)のオーディオデータをMIDIに変換し、ソフトウェア音源(ドラムマシンやシンセなど)で演奏し直すといったことが可能になっています。
こちらの動画では、ヒューマンビートボックスの録音をRoland 808のビートに、アコースティックギターで演奏したコード進行をシンセサイザーによるフレーズに変換するといったアプローチがとられています。

 

ライブパフォーマンスでも活躍

Liveを中枢に添えたライブ用のシステムを組むことで、ライブパフォーマンスの可能性を広げることができます。コンピューターや電子楽器によって構成されたライブだけではなく、ドラムなどの生演奏を加えたセッションにおいても、Liveは活躍します。

エレクトロニックポップのプロデューサー Rachel K Collier は、こちらのビデオで、自分ひとりで生演奏のループをその場で録音、加工、アレンジすることで、ライブパフォーマンスを行っています。

彼女のライブセットにおいても、前のセクションでご紹介したセッションビュー上に生成される様々なクリップを再生したり停止することで、曲の展開をつけていることがわかります。また、演奏を録音する際にも、Liveの強力なWARP機能により、楽曲のマスターテンポにフレーズを追随させることが可能になっています。

また、Live11からは、フォローテンポという機能が搭載されます。
これは、曲のマスターテンポを、特定のトリガー音源に自動で追随させるというものです。
こちらの動画では、生ドラムのスネアをトリガーにしてBPMを解析し、そのBPMにLive上で鳴らされているシーケンスを追随させています。

生ドラムの演奏はBPMが常に一定ではないゆえに、その独特のゆらぎが人間にしか出せないグルーヴを生みますが、フォローテンポのような手法を使うことで、そのようなグルーヴとコンピューターによる機械的なループや演奏をハイブリッドに混ぜることが可能となるため、オリジナリティあるライブパフォーマンスにつながるといえるでしょう。

 

楽器のように機能する専用
コントローラー

Abletonは、Live専用の別売コントローラー「PUSH」をリリースしています。
PUSHを使えば、コンピューターの画面を見ずともLiveを操れるようになり、まるで楽器を扱っているかのような感覚で制作を進めることができるでしょう。
こちらの動画ではサンプリング〜チョップによるループの作成から、パッドを使ったビートの打ち込みで即座に曲の土台を作り上げ、続々とフレーズを重ねつつ、エフェクトの処理などをリアルタイムにPush上のみで行っていくさまを見ることができます。

PUSHでは演奏やアレンジメントに加え、ミックスも非常に行いやすいため、楽曲を完成させるプロセスの殆どをPUSH上で完結させてしまうことも可能と言っても過言ではないでしょう。

また、Ableton社以外のMIDIコントローラーでも、Live用のプリセットを備えている製品が数多く発売されています。NovationやAkaiなどは特に多くの製品をリリースしていますが、最近ではスタートアップのメーカーからも、LIVEの制御が可能な興味深いコントローラーが数多くリリースされています。

AbletonのWEBサイトでは多くのハウツー動画やコラム、フリーのデバイスなどが紹介されています。
すでにLiveを使っている人も、まだ使っていないけど興味がある・・・という方も、チェックをおすすめします。
特にOne Thingというシリーズでは、色々なアーティストが紹介するオリジナルの制作手法をクイックにチェックすることができます。

また、この記事内でも多数引用させていただいた、エレクトロニックミュージックメディアであるFACT Magazineによるシリーズ “Against The Clock” では、様々なアーティストが「10分間で曲を作る」というチャレンジを行っています。
Live、およびそれ以外のDAWによる制作の様子はもちろんですが、ハードウェアのみによる制作を行うアーティストによるチャレンジの様子なども多数紹介されており、様々な制作手法に触れることが可能ですので、こちらもぜひチェックしてみましょう。